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1人法人が実際に払う税金、全部まとめてみた

1人法人の運営、法人税だけじゃなく個人として支払うものも含めると結構ある・・・

それぞれどんな仕組みなのか、理解のために重い腰を上げてまとめてみました。

東京都23区内の会社を前提に書いています。

1人法人が払う税金の全体像

1人法人が払う税金は、大きく「法人として払うもの」と「個人として払うもの」の2種類に分かれます。

法人側は法人税(国税)、法人都民税、法人事業税+特別法人事業税、消費税。

個人側は所得税、住民税、社会保険料。これが全体像です。

東京都23区の場合、道府県民税と市町村民税をまとめて「法人都民税」として都税事務所に申告・納付します。他の地域だと県税事務所と市役所に別々に申告しますが、23区は窓口が都税事務所ひとつで済むのが特徴です。

法人として払う税金

法人税(国税)

法人税は、法人の所得(利益)に対してかかる国税です。税務署に申告・納付します。

中小法人の場合、所得800万円以下の部分は15%、800万円を超える部分は23.2%の税率が適用されます。

なお、2025年度の税制改正で所得金額が年10億円を超える事業年度は15%から17%に引き上げられました。1人法人にはほぼ関係ないですが、一応知っておくと安心です。

法人都民税(都税事務所に申告)

法人都民税は「法人税割」と「均等割」の2つから成ります。東京都23区内の場合、道府県民税相当分と市町村民税相当分をまとめて都民税として都税事務所に申告・納付します。

法人税割は法人税額に対して7.0%(道府県分1.0%+市町村分6.0%)。法人税額に連動するので、利益が少なければ少なくなります。

均等割は赤字でも毎年かかる固定費です。資本金1,000万円以下・従業員50人以下の場合、年間7万円(都民税2万円+区市町村民税相当5万円)。利益ゼロでもこれは必ず払います。法人を維持するだけでかかるコストなので、法人化前に知っておきたいポイントです。

法人事業税+特別法人事業税(都税事務所に申告)

法人事業税も都税事務所に申告・納付します。法人都民税と一緒に申告できるので、手続きとしてはまとめて出す形です。

軽減税率適用法人(資本金1億円以下の中小法人)の場合、所得に応じた3段階の税率になっています。年400万円以下の部分が3.5%、400万円超800万円以下の部分が5.3%、800万円超の部分が7.0%です。

これに加えて、特別法人事業税が法人事業税額の37%分かかります。法人事業税とセットで計算して、一緒に都税事務所に納めます。

消費税(税務署に申告)

消費税は、売上にかかる消費税から仕入にかかる消費税を差し引いて税務署に納付します。

インボイス登録をしている場合は、2割特例が使えると負担がかなり軽くなります。2割特例は、納付額を「売上にかかる消費税の2割」にできる制度で、2026年9月30日を含む課税期間まで適用可能です。インボイス登録をきっかけに課税事業者になった小規模事業者が対象なので、1人法人でインボイス登録した人はまずこの特例が使えるか確認するのがおすすめです。

個人として払う税金・社会保険料

法人の税金とは別に、社長個人としても払うものがあります。1人法人の場合、自分に役員報酬を出して、そこから個人の税金と社会保険料を払う流れです。

所得税(役員報酬から)

役員報酬は「給与所得」として扱われるので、給与所得控除が使えます。これがフリーランス(個人事業主)と比べたときの大きなメリットのひとつ。

例えば役員報酬を年480万円(月40万円)に設定した場合、給与所得控除は140万円。課税所得は340万円(他の控除を考慮しない場合)になります。所得税率は累進課税なので、課税所得330万円超は20%、330万円以下は10%が適用されます。

住民税

住民税は前年の所得に対して約10%かかります。役員報酬ベースで計算されるので、報酬が高ければ住民税も高くなる。翌年にドンと来るので、初年度は特に注意が必要です。

社会保険料(健康保険・厚生年金)

1人法人でも社会保険への加入は義務です。健康保険と厚生年金の保険料は役員報酬の金額(標準報酬月額)で決まります。

ポイントは、会社負担分と個人負担分の両方を実質的に自分で払っていること。合計すると役員報酬の約30%になります。月額40万円の役員報酬なら、会社負担+個人負担で月12万円くらい。年間にすると約144万円。これが地味に痛い。

結局、年間いくらかかるの?

東京都23区内の1人法人でざっくり試算してみます。売上1,000万円、役員報酬480万円(月40万円)、経費200万円、法人所得320万円と仮定した場合。

法人側(税務署+都税事務所に納付)

項目申告先計算金額
法人税税務署320万円 × 15%約48万円
法人都民税(法人税割)都税事務所48万円 × 7.0%約3.4万円
法人都民税(均等割)都税事務所固定7万円
法人事業税都税事務所320万円 × 3.5%約11.2万円
特別法人事業税都税事務所11.2万円 × 37%約4.1万円
消費税(2割特例)税務署売上の10% × 20%約20万円
法人側 小計約94万円

個人側

項目金額
所得税約15万円
住民税約25万円
社会保険料(会社負担+個人負担)約144万円
個人側 小計約184万円

法人+個人の合計で年間約278万円。 売上1,000万円に対して約28%です。「税金って法人税だけでしょ」と思っていると、かなりギャップがあるはずです。

売上別で見ると何%くらいかかる?

売上規模を変えてシミュレーションしてみました。経費は売上の20%、残りを役員報酬と法人所得に配分した想定です。

売上役員報酬法人所得法人側個人側合計売上比
600万円300万円(月25万円)180万円約57万円約107万円約164万円約27%
1,000万円480万円(月40万円)320万円約94万円約184万円約278万円約28%
1,500万円600万円(月50万円)600万円約167万円約240万円約407万円約27%

どの売上帯でもだいたい27〜28%前後に落ち着きます。社会保険料が役員報酬の約30%と大きいので、売上が増えても比率はあまり変わりません。手残りは売上の7割くらいが目安です。

※上記はすべて筆者調べによる概算です。実際の税額は控除の適用状況や自治体によって異なります。正確な計算は税理士に相談してください。

まとめ

1人法人の税負担は、法人税だけ見ていると「意外と安い」と感じるかもしれません。でも均等割は赤字でもかかるし、社会保険料は会社負担分も含めるとかなりの額になる。売上に対して合計で約27〜28%が税金・社会保険料で出ていくのが現実です。東京都23区なら法人都民税と法人事業税は都税事務所にまとめて申告できるので手続き自体はシンプルですが、金額は見落としがちです。法人化を検討するなら、法人と個人の両方の負担を合わせた全体像で判断するのが大事です。